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ベルゲンでの作庭の心
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 私は、信州松本、「玄向寺」を菩提寺とする浄土宗の家に生まれた。「玄向寺」は浅間温泉の南約1Kmの東山の麓に位置し、生家からゆっくり歩いて30分~40分前後の位置にあり、幼い日から家族とともに和尚の講話を聞きにつれられていった寺である。
この寺の存在は幼い時から畏敬の対象として理解してきた。
講話の時、大人に混じって兄弟で正座して聞いていると、和尚は「坊達正座しなくて良いから楽に足を伸ばして聞きなさい」とやさしかった。お経で鍛えた声がなんともぬくもりがあって、心が
和んだ記憶が今でも生々しくよみがえる。母も「お前たち行儀良く聞いていたね」とほめてくれた。これもまたうれしかった。
 こんな幼児体験を持つ私が、今ノルウエーのベルゲンで日本庭園造りをしている。
1905年ノルウエーが独立した年、日本とノルウエーは国交を樹立した。それから100年が経過し、その記念に「花の万博協会」からの補助も受け、大半は国立ベルゲン大学とノルウエーの地元の経済人の寄付により建設費を得て作庭するものである。
ノルウエーは、日本とほぼ同じ面積に500万人未満の人口で、北海に面した国土の大半は美しい環境に恵まれていて、いたるところ完成した庭園である。それと共にこの大地の心を理解する時、信州の自然と共通したものを感じ作庭の方向付けを助けてくれた。信州人の私の感性で、ベルゲンの大地をキャンバスとし庭を造る。
石組みの作業をするところを近隣の人たちが興味を持って眺めに来る。これらの人の期待にこたえていかなくてはならない。
2006年二度目の現場も明日はひとまず切り上げ帰国するため、プロジェクトリーダーのブルニエフさんが家に夕食の招待をしてくれた。ご馳走になり外に出た時、北斗七星が美しかった。「僕の故郷の空もこのようにきれいです」と現地の仲間に自慢した。彼らは星空など意識して見たこともなく、北斗七星が自分の家の真上に見えるなんて気がつかなかったと笑った。
# by harutokobayashi
by harutokobayashi | 2006-05-01 11:25 | 設景の思想
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