「くにたちの建築作品」 1994・11・26
国立資料館は、まさにアメリカンスタイルの建物、武蔵野の大地に移入されたグラスハウス、大地を掘り下げ、ミュージアムの機能をサンクンされた空間に設置し、そこから見上げる安養寺の森、その時、周囲の密集した住宅などの建物が視界から消える。このすばらしい空間演出、空と森、まさに効果的な空間創造、レンガタイルの色、武蔵野の雑木林の色、意図的にデザインされ植えられたムラサキシキブ、侘び、寂びの香を感じさせる。国立の新しい文化の目玉施設となった。 しかし、気になること、安養寺の森には昔から多くの生き物、特に野の鳥が多く生息している。かれらは、この森を中心に営みを続けてきた。そこに隣接して突然現れた見えないガラスの壁、そこに激突する鳥たち、建築家が設景の思想の一部でも理解していれば避けられる事故の予感、建築家は鳥も馬鹿ではないから学習し、ガラスは避けるという。しかし、留鳥の一部はともかくとして、直線的な飛翔をする種は飛翔を抑止することが難しい、あるいは旅鳥、渡り鳥には学習のチャンスは無い、建物のデザインがすばらしいだけに生き物の技術が応用されていないことが残念だ。 この作品を見て一週間位したとき、ミュージアムの館長さんから電話があった。 幼稚園生が学習に来た時の出来事、幼児たちがバスから降りてミュージアムの入り口に向かって走り出した、その時入り口近くのムラサキシキブにいたメジロの群れ(十数羽)が驚いて飛び立ち、哀れにもガラスの回廊に激突して幼児の目前で11羽が死んだ、何か良い方法は無いでしょうかとのこと、予測していたことが残念にも的中したことになった。 早速軽井沢の星野温泉に、窓に張る鷹の形をしたバードセーバーが売ってますこれをガラスに張ったら被害が防げるのではとお話した。 鷹の形に鳥は驚いて、結果的にガラスを避けることになることになるとの考えと何かがあることを教えることができる。 視覚的に風景に溶け込んでいるから環境建築、というのではなく、野の生き物にとっても安全な対策がなされて、はじめて環境建築といえるのではないか・・。 「くにたちの建築作品」は洗練された美しい作品であるゆえに誠に残念であった。
by harutokobayashi
| 2007-01-02 21:56
| 設景の思想
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