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兵庫県立美術館
「絶筆」
明治から現代に至るまで国内で活躍された画家たちが、生前最後に書いた作品展「絶筆」(兵庫県立美術館2007年5月29日~7月8日)を見る機会をいただいた。
会場の兵庫県立美術館は、阪神・淡路大震災から文化復興のシンボルとして、建築家安藤忠雄氏の設計により平成14年に誕生したものである。
この美術館を会場にして、震災時兵庫県知事として復興の陣頭指揮を執られた貝原俊民前知事が、旭日大受賞を受賞されたことにたいし、復興に協力された多くの人たちに感謝し、御礼申し上げたいとの集いがあり、私もご招待いただき、当時の関係者の皆様にお会いする楽しみを持って参加させていただいた。その招待状の中に「絶筆」の入場券が同封されていた。貝原さんらしい細やかなお心遣いである。
誰しもが年齢とともに、やがて受け入れなくてはならない死を意識するようになる。
この避けることのできない死を前にした芸術家たちは、そこに何を見、何を考え、何を表現しようとしたのだろうかを確認する良い機会であった。展示された107の作品は、円熟し、社会的に高い評価の元、その栄達を歓喜する画家、反面ひっそりと自らの殻に閉じこもった姿を感じさせるもの、病魔と闘いながらその瞬間まで筆を持ち最後にクレジットのサインがかけず、最後を看取った友人の手を借りて画家の名前を書いたもの、その他未完の作品など、それぞれの作品の前で武者震いが出た。
多くの画家たちは、花・鳥・山などを描き、花畑を「時の庭」と呼んだという。私の母も亡くなる時、親不孝にも私は臨終に立ち会えなかったが、そばにいた兄の家族に「ありがとう、お花畑がきれい!」といって西へ旅たったと聞いた。
少年の時から野の鳥に興味を持っていた私には、鳥の絵にも非常に関心が高い、鳥は知性や友愛、あるいは自由、権力の象徴として描かれることが多く、画家によって人生を元気付けてくれる作品となっていることが多い。
信州北アルプスの麓、松本産まれの私にとって山は崇高な存在であった。毎日眺める北アルプスの雄峰の美しさはいつも世界一と考えている。反面冬山の遭難を題材にした小説「氷壁」(井上靖)、姥捨て山を題材にした「楢山節考」(深沢七郎)など山と命のかかわり、生と死の一体となった異界としての山、たくさんの山を描いた作品とも触れながら、なぜか幼少時を思い起こす機会であった。
そんな中で、今井俊満(1928~2002)のThe para para dancingはエナメル・ミクストメデイア・布を使用した縦208.5 幅 1025のトリッピングとコラージュによる大作は、渋谷の若者の命を表現しているように見え、長年若者の街、原宿にいた自分達のある時代の断面を見せられたように感じた。
命を考える良い機会を与えてくださった貝原さんに感謝します。
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by harutokobayashi | 2007-07-07 12:25