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文化としての公園づくり

文化としての公園づくり Making a Park as a Culture

小林 治人 Haruto KOBAYASHI

株式会社東京ランドスケープ研究所会長、

株式会社国際設景集団社長、

一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会、

一般社団法人公園管理運営士会 顧問

文明的進化によって成熟化が進んだ現代社会は、 ネットによる情報システムによって多様な個人が国 境を超えて容易に交錯し、地球規模で連鎖するようになった。その結果、個人という最小の社会単位が自国以外の非日常的異文化を求めて観光目的地を選択できるようになり、今まで人気のあった東京、京都、大阪、などの観光スポット、中でも日本人の精神文化の軸をなす神社・仏閣・城郭・日本庭園に加え、地域の日本的生活文化の場として「和の文化」を求める傾向が全国的な広がりを見せている。今では「国営ひたち海浜公園」、「国営昭和記念公園」など都市公園も観光目的地に選ばれるようになった。これらの大規模公園は一見和洋折衷式の空間構成に見られがちな面もあるが、海外の人には日本的発想による現代の巨大庭園として受け止められている側面があることに注目したい。20世紀後半の半世紀をかけて10万ヵ 所以上の都市公園を整備してきた中で、現代日本の公園計画設計のあり方、施工の技が日本庭園作庭の長い歴史に培われた思想と技に支えられていることの証しであると受け止めたい。他方、年齢を問わない元気な超高齢化社会の出現は、高齢者の日常生活圏に健康促進施設としての公園整備がユニバーサルデザインされていることで、

地域の人々の健康保持に貢献できる配慮が不可欠なものとなっている。また、都市部において遊び盛りの子供たちが外で遊びやすいように工夫した公園整備については、ただ机上での発想だけでなく基礎的な調査の裏付けによる計画設計が必要で、すでに優れた遊具など一般化しているが、生き物空間である公園でなければ体験できない、公園空間構造のあり方が問われている1)。さらに国際的巨大流通システム の出現や、ペット産業の隆盛は多様な外来種の侵入 の機会を増やし、わが国固有の生態系に悪影響を与えている。外来種の一部は、生物多様性を標榜する公園でのコガタスズメバチ、マダニなど多数の繁殖により、安心・安全な公園利用に不安を抱かせてもいる。これら多様な社会的変化の中で、公園事業関係者たちは基本的な命題である公園とは何か?公園はいかにあるべきか?と機会あるごとに「公園論」 2) を繰り返してきた。CLA3) の仲間と公園の計画設計について議論を重ねる中で、通常設計業務が終了し図面を提出した後は、入札によって選ばれた施工会社が工事を行う現在の仕組みから、設計の意図が十分現場に反映しないことが多く、残念な思いをすることがある。自然の素材である岩や樹草を主材料とする公園工事では、図面では伝えられない素材の心を理解することが必要であり、素材との対話が困難な現状では文化度が低くなりがちで、施工管理は設計と一体的な行為として今後考えるべきである。このようにして完成した公園を管理運営していくQPA4) の仲 間の仕事は、実に多様で複雑な内容が求められ、時 間の経過の中で利用者と公園の間をゼネラリストと してプロヂュースする資質が問われる。このような時、社会的要請にこたえて今回、都市公園法が改正された5)。この改正は、多様な公園文化 形成を重視するという基本的道筋を示したもので、 人々の公園に対する期待は大きなものとなってきた。この社会的期待に沿うために、私は和の地域文化を強調した公園づくりを目指すべきであると考える。公園整備にあたっては、従来の機能的・効率的・定型的秩序の維持推進を大命題とした文明的進化に偏りがちであった姿勢から、科学的・論理的立場を踏まえ6)、公園の持つ特性としての地域性・地方性・ 土着性を活かしながら、地域文化の核となる固有性 の高い公園創出を目指すことが必要であると考える。地域ごとに異なる人材・素材利用を基本とした土着の公園創出、地域の柱である在地性(郷土・地域・地方など、個性や性格を持った土地)、在時性(特定の時・時点・時期)、在人性(その土地、その土地に生きた人) 7) に学識のある主観性が加わって地域の魅 力を高める芸術的公園創出へと結びつくと考える。 今回の法改正の目指す公園利用運営に関する一連の開放的で自由度の高い方向づけは、一大快事として歓迎するものであるが、文明的進化が保持してきた公園DNAの不易流行の存在をいかに調和融合させ るか、たとえば公園構成要素である諸施設の物理的 耐久性、樹草の遷移や枯死などの生命性、人々のレクリエーションや防災性などの機能性などを考えたとき8)、公園の空間的関係における位置、人間と人間、 人と物の空間的位置という確認にとどまらず、社会 的、経済的な位置は時間とともに変化し、公園は限られた都市空間の中で直接的に影響を受ける9)。この 時、超長期的公園事業の継続は社会的・精神的な面

においてわれわれは何が起ころうとも「公園永遠不死・不滅」の思想を貫く確固たる覚悟を持たなければならない。現在描く理想的な「文化としての公園」創造を実現するための文化的深化追求の道程には、時として公園DNAを無視したリスクを伴うこともある かもしれないが、このリスクの弊害を避けるために は、文明的進化と文化的深化がタテ糸とヨコ糸の関係でバランスよく相互嵌入させなければならない。鎖国時代に一定の様式が完成した日本庭園が、明治維新による西洋化、第一次世界大戦後の和洋折衷による近代化、第二次世界大戦後は折衷主義を否定しながら国内、地域、国際、と各地に作庭を続け、大規模公園の創出にいたるまで激変する時間と空間の中で庭園・公園は進化し、深化を繰り返してきた歴史があるが10)、国家的催事である2020年オリンピッ ク・パラリンピック東京大会開催を控えている今、来日した人々に一目見ただけで心が揺さぶられるような日本庭園文化の技を生かした街並みや競技施設を取り巻く公園の景に11)、探していた日々幸せに過ごせるための答えの一部が見出せるような、わかり やすく、親しみやすい、包容力のある多様性空間創出を目指したい。そのことが2020年以降にあるべき 「文化としての公園」の姿を示すことになると考える。

参考・引用文献 1

大屋霊城:都市の児童遊場の研究,1927年(昭和2年)稿 2

小林治人:「設景」その発想と展開,マルモ出版,1996 3

一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会 4

一般社団法人公園管理運営士会 5

都市公園法改正を聞く,環境緑化新聞 758,2017715 6

蓑茂寿太郎:ランドスケープ計画の科学と実際,東京農業大学農 学週報第62巻第1,2017 7

一志茂樹:地方史に生きる,平凡社,1984 8

池原謙一郎:公園改造に、空間の寿命を思う。日経アーキテクチュ ,1981817日号 9

久保貞:景観設計への歩み 久保貞論文集,1986 10

神代雄一郎:現代の名庭 日本の庭園7,講談社,19801128 11

進士五十八:隈研吾氏の「庭の時代、コミュニケーションの時代」 ,平成28年度公園緑地研究所調査研究報告

注記:この原稿は、「公園緑地」 Vol.78 No.2 2017 巻頭言 として掲載されたものである。


by harutokobayashi | 2018-11-07 15:52 | 職能論
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